
2025年11月25日、ドイツの FORTEC Integrated は Intel Atom x7211RE(Amston Lake)を搭載した 3.5インチシングルボードコンピュータ「SBCPRO-X51」を発表しました。柔軟な M.2 拡張モジュールで USB-C DisplayPort や V-by-One を追加できるのが大きな特徴です。
2025年11月25日、ドイツの FORTEC Integrated は Intel Atom x7211RE(Amston Lake) を搭載した 3.5インチシングルボードコンピュータ「SBCPRO-X51」を発表しました。柔軟な M.2 拡張モジュールで USB-C (DP Alt Mode) や V-by-One を追加できるのが大きな特徴で、24時間連続動作と −20〜+80℃の広温度対応など、完全に「産業用ど真ん中」を狙ったボードです。
スペック

| ■ FORTEC SBCPRO-X51 | |
|---|---|
| プロセッサ | Intel Atom x7211RE(Amston Lake-N、2コア/2スレッド、最大3.2GHz、TDP 6W) |
| グラフィックス | Intel UHD Graphics(Amston Lake内蔵GPU) |
| メモリ | SO-DIMMスロット×1、DDR5-4800、最大16GB |
| ストレージ | M.2 M Key 2242 ×1(NVMe SSD向け) |
| 拡張性 | M.2 2230(Wi-Fi/Bluetooth)、専用M.2(USB-C DP Alt Mode / V-by-One)、GPIO、I²C、RS-232/422/485×2 |
| ネットワーク | 2.5GbE RJ45 ×2 |
| インターフェース | リア:DP++、USB 3.2 Gen1×2、2.5GbE×2、24V DC-IN。 オプション:USB-C (DP Alt Mode) |
| 電源/サイズ | 24V DC入力 / 146 × 102 mm(3.5インチSBC) |
| OS | Windows 11 IoT Enterprise LTSC 2024、各種Linux |
モデル/構成違い
データシート上では 2種類のモデル(SKU)が用意されています。
- SBCPRO-X51-01(PC-61-737): Intel Atom x7211RE、25V Phoenix電源入力
- SBCPRO-X51-00(PC-61-736): Intel Atom x7211RE、5VSB ATX電源、V-by-One対応は “要問い合わせ”
販売店によっては詳細な型番まで明記されていない場合もあるので、電源仕様や必要な V-by-One 対応の有無は注文前に要確認ですね。
価格の目安
Digi-Key(メキシコ向けサイト)では SBCPRO-X51-00 が 1枚あたり 353.80 USD(数量1の場合)で掲載されており、10枚では 332.00 USD、50枚では 320.50 USD という段階価格になっています(すべて税抜)。
ドイツ向けの SBCPRO-X51-01 も Digi-Keyに掲載されており、1枚あたり 254.27ユーロ(税抜) と案内されています(VAT込みでは約 302.58ユーロ)。
いずれも法人向け価格であり、為替や在庫状況によって変動するため、実際に導入する際は必ず最新価格を販売店側で確認した方が安心です。
特徴
SBCPRO-X51は、ざっくり言えば「Atom x7211RE を使った、拡張性重視の3.5インチ産業用SBC」です。M.2で映像系までモジュール化しているのが珍しく、USB-C一発でディスプレイ+電源+タッチパネルを引き回せる構成も視野に入っています。
主要コンポーネント(CPU/GPU 周り)
CPU は Intel Atom x7211RE(Amston Lake-N)。2コア/2スレッド構成で、最大 3.2GHz のターボ動作に対応し、TDP は 6W に抑えられた組み込み向けプロセッサです。 Amston Lake 世代の Atom は、前世代の Skylake 世代 Celeron と比べて最大 125% 程度の性能向上があるとする評価もあり、ローエンドながら産業用用途には十分な余力があります。
内蔵GPUは Intel UHD Graphics で、4K@60Hz 対応の DisplayPort 1.2、およびオプションの M.2 USB-C モジュール経由で USB-C (DP Alt Mode)(最大 3840×2160@60Hz)を扱えます。
メモリとストレージ
メモリは DDR5 SO-DIMM スロットが1本のみ。公式では最大 16GB / DDR5-4800 とされています。産業用途の HMI、ゲートウェイ、軽量なエッジAI処理などを想定すると、16GB あれば実務で困るケースはそう多くないでしょう。
ストレージは M.2 M Key 2242 スロット×1 に NVMe SSD を装着する構成です。SATAポートや 2.5インチベイは用意されていないので、大容量ストレージが必要な場合は外付けのSATAブリッジやネットワークストレージ(NAS)との併用を前提に考えることになります。
拡張性としては、
- M.2 2230 スロットで Wi-Fi/Bluetooth モジュールを追加
- 専用 M.2 スロットで USB-C DisplayPort モジュール または V-by-One モジュールを実装
- GPIO 4入力+4出力(5V/1A)や I²C、RS-232/422/485 ×2
といった構成になっており、典型的な産業機器の I/O をピンヘッダでだいたいカバーできます。
その他(ネットワーク/ポート/給電/ソフト)
ネットワークは 2.5GbE RJ45ポートが2つという構成で、1GbE の約 2.5倍の帯域が確保できます。産業用カメラや大規模ログ転送などでもボトルネックになりにくく、L2スイッチを使った冗長化構成を組む場合にも扱いやすいです。
リアI/O(端子面)は、
- USB-C(USB 3.2 Gen1×1、DisplayPort Alt Mode対応・オプション)
- USB 3.2 Gen1 Type-A ×2
- DisplayPort++ ×1
- 3.5mm ライン出力 / マイク入力
- 2.5GbE RJ45 ×2
- 24V DC-IN
という、かなりバランスの良い構成です。
OS については、データシート上で Windows 11 IoT Enterprise LTSC 2024 対応が明記されており、FORTEC の Windows IoT ページでも SBCPRO-X51 / BPCPRO-X51 を Windows 11 IoT 搭載製品の例として掲載しています。 さらに、各種 Linux ディストリビューションと一般的な組み込みツールもサポート対象と紹介されており、Windows / Linux のどちらでも使いやすい構成になっています。
外観(I/O配置・サイズ感・設置方法)
SBCPRO-X51 は 146 × 102 mm の 3.5インチサイズで、ヒートシンク込みの構成を想定したレイアウトになっています。基板上には SO-DIMM スロット、M.2スロット、各種コネクタがぎっしり並ぶものの、産業用SBCらしくシルク印刷が丁寧で、信号線と電源ラインもかなり整理された印象です。

上から見た全体写真では、中央付近に Atom x7211RE の SoC、その周囲に電源回路やコネクタが規則的に並んでいるのがわかります。上側に SO-DIMM スロット、右下側に 2.5GbE や USB、DP などのリアI/O が一直線に並び、左側には電源コネクタと一部の内部ヘッダ類が集約されています。

手前側に 2.5GbE ×2、USB 3.2 Gen1 Type-A ×2、USB-C、DisplayPort、オーディオジャックがコンパクトにまとまっている様子がよく見えます。背の高いI/Oコネクタが一列に並び、その後ろにM.2モジュールやSO-DIMMが配置される階層構造なので、エンクロージャ設計時にもレイアウトが読みやすいです。
まとめ
SBCPRO-X51 は、「Atomクラスでそこまで派手さは無いけれど、産業用途に必要なものをきっちり揃えてきた 3.5インチSBC」という印象です。2.5GbE×2 や豊富なシリアル/GPIO、M.2ベースの映像拡張モジュールなど、エッジゲートウェイやサイネージコントローラ、装置組み込み用PCとしてちょうどよいバランスのスペックにまとまっています。
向いているのは、24時間連続稼働と広温度範囲が必須で、かつ Windows 11 IoT や Linux を使った標準的なソフトスタックでシステムを組みたい案件です。
