
RadxaはRockchip RK3588S2を搭載したシングルボードコンピュータ「ROCK 5C」を発売しました。A76×4+A55×4構成で最大2.4GHz、メモリは最大32GBまで選択可能で、HDMI 2.1(8K対応)やWi-Fi 6、Bluetooth 5.4を備えた薄型のSBCです。PCIe 2.1 x1はFPC経由で提供され、NVMe等はHATで拡張する設計になっています。
「RK3588の性能が欲しいけど、もう少しコンパクトで手頃なボードはないかな」と思ったことはありませんか? RadxaのROCK 5Cは、そんな需要に刺さる一台なんですよね。
本製品はRockchip RK3588S2(A76×4+A55×4、最大2.4GHz)を搭載した薄型SBCで、メモリは最大32GBまで用意されています。HDMI 2.1(最大8K対応)やWi-Fi 6・Bluetooth 5.4を内蔵し、6 TOPsのNPUも搭載。PCIe 2.1 x1をFPC経由で取り出せるため、HATでNVMeなどに拡張できる設計です。
同ファミリーにはRK3582を搭載した「ROCK 5C Lite」も存在しますが、本記事ではフルスペック版のROCK 5Cを詳しく解説していきます。
スペック

| ■ Radxa ROCK 5C | |
|---|---|
| CPU | Rockchip RK3588S2:A76×4(最大2.4GHz)+A55×4(最大1.8GHz) |
| GPU | Arm Mali-G610MC4 |
| NPU | 6 TOPS(INT4/INT8/INT16/FP16/BF16/TF32対応) |
| メモリ | 2・4・8・16・32GB LPDDR4x(64-bit) |
| ストレージ | eMMCコネクタ+microSDスロット(SPI Flashなし) |
| 無線LAN・BT | Wi-Fi 6(802.11ax)+Bluetooth 5.4(外部アンテナ端子) |
| 有線LAN | Gigabit Ethernet(PoEはHAT拡張が必要) |
| 映像出力 | HDMI 2.1(最大8K@60fps)+MIPI DSI(最大2K) |
| カメラ | MIPI CSI 4-lane 1ポート |
| 拡張 | 40ピンGPIOヘッダ・FPC PCIe 2.1 x1 |
| 電源 | USB-C 5V 3AまたはPoE(HAT) |
| サイズ | 86×56mm |
| 動作温度 | 0°C〜50°C |
**RK3588S2(A76×4+A55×4)+6 TOPS NPU+最大32GBメモリ+HDMI 2.1(8K対応)**を、86×56mmの薄型基板にまとめたSBCです。Wi-Fi 6やBT 5.4を内蔵しており、外部アンテナ端子もあるため、筐体設計の自由度が高くなっています。
特徴
SoC・CPU・GPU
ROCK 5Cに搭載されているRockchip RK3588S2は、RK3588ファミリーの中でも「コンパクト向け派生」として位置づけられるSoCです。RK3588が産業・車載向けの豊富なI/Oを持つのに対し、RK3588S/S2はコンシューマー向けに端子を絞った設計になっています。
CPU構成はCortex-A76×4とCortex-A55×4のbig.LITTLE構成。A76コアは最大2.4GHz、A55コアは最大1.8GHzで動作します。big.LITTLEの組み合わせにより、高負荷時はA76が全力で回り、軽負荷時はA55で省電力動作が可能なんですよね。SBCとしては「PC寄りのマルチタスク」を十分狙える構成で、メモリも最大32GBまで選べるため、コンテナ複数運用やちょっとしたサーバ用途にも余力があります。
RK3588S2の正体について少し掘り下げると、これはRK3588Sのマイナーチェンジ版です。RK3588Sは2021年末に発表され、RK3588から外部ディスプレイ端子数やPCIeレーン数を削減したチップとして登場しました。S2はその改良版で、基本スペックは同等ながら製造プロセスの最適化が行われています。
GPUはArm Mali-G610MC4で、デスクトップUI程度なら問題なく動くクラスです。ハードウェアデコーダも優秀で、H.265/VP9は8K@60fps、H.264は8K@30fps、AV1は4K@60fpsに対応。8Kメディアプレイヤーとしても使える性能を持っています。エンコーダもH.264/H.265が8K@30fpsまで対応しており、軽量な録画・配信用途にも使えますね。
NPU・AI性能と競合比較
ROCK 5Cには6 TOPsのNPUが搭載されています。INT4/INT8/INT16/FP16/BF16/TF32に対応しており、エッジAI推論には十分な性能です。競合製品と比較してみましょう。
| 製品 | NPU性能 | 価格帯(参考) |
|---|---|---|
| ROCK 5C(RK3588S2) | 6 TOPS | 約203 |
| ROCK 5C Lite(RK3582) | 5 TOPS | 約105 |
| Raspberry Pi 5 | NPUなし(AI HATで13 TOPS追加可) | 約80 |
| Orange Pi 5(RK3588S) | 6 TOPS | 約150 |
| ROCK 5B(RK3588) | 6 TOPS | 約190 |
Raspberry Pi 5はNPUを内蔵しておらず、AI処理には別途AI HATが必要です。その点、ROCK 5Cは本体だけで6 TOPsのNPU演算が可能なのがうれしいポイント。YOLOv5やMobileNetなどの軽量モデルを動かすなら、この価格帯では非常に魅力的な選択肢になります。
RK3588系のNPUは、Rockchip公式のRKNN-Toolkitを使ってモデル変換・推論を行います。TensorFlow、PyTorch、ONNXなどのフレームワークからの変換に対応しており、エコシステムも整ってきています。
メモリとストレージ
メモリは2・4・8・16・32GBのLPDDR4x(64-bit)から選択できます。64-bit幅で帯域は十分確保されており、マルチタスクやコンテナ運用でもボトルネックになりにくい構成ですね。価格差を考えると、4GB〜8GBあたりがコスパの良い選択になりそうです。
ストレージはeMMCコネクタとmicroSDスロットが用意されており、SPI Flashはありません。SPI Flashがないのは少し残念なポイントで、ブートローダーの配置に制約が出る場合があります。まずmicroSDでOS導入・検証して、本運用でeMMCに移行する流れが組みやすい構成です。
OSインストール手順は公式Docsに導線があり、公式のDebian/Androidイメージが配布されています。Armbian、Ubuntu、Manjaroなどのサードパーティイメージも対応が進んでいます。
拡張
ここが地味に重要なポイントなんですが、ROCK 5CのオンボードにはM.2スロットがありません。PCIe 2.1 x1がFPC経由で取り出せるため、NVMeやAIアクセラレータを使いたい場合は、別途HATを用意して変換する設計になっています。帯域もPCIe 2.1 x1(約5Gbps)が上限なので、超高速ストレージを期待する用途には向きません。
ただ、M.2 E KeyスロットはWi-Fiモジュール用として搭載されており、PCIe 2.1 1-lane、SATA、USB 2.0をサポートしています。Wi-Fiモジュールを外して別のM.2 E Keyデバイスを差すこともできますが、その場合は無線機能を失うトレードオフになりますね。
FPC経由で接続できるアクセサリとしては、NVMe SSD HAT、Penta SATA HAT、Dual 2.5G Router HATなどが公式で案内されています。NASやルーターとして使いたい方には、これらのHATとの組み合わせが面白い選択肢です。
GPIOは40ピンヘッダが用意されており、UART×5(うち2つはフロー制御対応)、SPI×3、I2C×6、PWM×7、CAN×1、ADC×1など豊富なインターフェースに対応しています。GPIO×27本が利用可能で、IoTプロジェクトや産業用途にも対応できる拡張性を持っています。
ネットワーク
有線はGigabit Ethernetで、PoEはHAT拡張で対応可能です。Radxa 25W PoE+ HATを使えば、電源ケーブルを別途引く必要がなくなるのがうれしいポイントですね。配線を1本で済ませたい常設用途(NAS、ホームサーバ、監視端末など)と相性がいいです。
無線はWi-Fi 6(802.11ax)+Bluetooth 5.4を内蔵しており、外部アンテナ端子もあるため、筐体内でのアンテナ配置に自由度があります。IoTゲートウェイやホームオートメーションのハブとして使うなら、この無線環境は十分でしょう。
電源・熱設計
電源はUSB-C 5V固定で給電します。標準的な使用では5V 3A(15W)で動作しますが、PCIe拡張やUSB 3.0を活用する場合は25W以上のアダプタが推奨されています。PD対応の高電圧アダプタを使っても5Vで給電される点は注意が必要ですね。
公式Docsでは「Radiator(放熱部材)」の案内があり、ヒートシンクやファン等の追加放熱が前提になりやすい構成です。Radxa公式のヒートシンク(Heatsink 6540B等)や、ecoPI PROアルミケース(約$18.5〜)などが専用設計で用意されています。高負荷で使う予定なら一緒に購入しておくと安心ですね。
動作温度は0°C〜50°Cと明記されています。夏場の屋内設置や密閉筐体での運用では、温度監視を入れておくことをおすすめします。
外観

基板上面・下面・ポート側が確認できる公式画像(Radxa Docs)
基板サイズは86×56mmで、Raspberry Piとほぼ同じフットプリントです。Ethernet、USB、HDMIなどのポートは同一側に集約されており、配線取り回しはシンプルにまとまります。
まとめ
ROCK 5Cは、RK3588S2の処理性能+6 TOPS NPU+最大32GBメモリ+HDMI 2.1(8K)+Wi-Fi 6/BT 5.4を薄型86×56mm基板にまとめた、バランス型のハイパワーSBCです。
最大32GBメモリを活かしたホームサーバ・コンテナ運用や、6 TOPs NPUでのエッジAI推論、さらにHDMI 2.1とハードウェアデコーダを用いた8Kメディアプレイヤーなど、小型でもCPU・メモリに余力が欲しい用途には最適です。Wi-Fi 6やBT 5.4も内蔵しており、IoTゲートウェイや軽量NASとしての適性も高いでしょう。
逆に、NVMe SSDをオンボードで直付けしたい人には向きません。PCIe 2.1 x1はFPC経由での接続となり、HAT追加の手間と帯域制約(約5Gbps)が発生するため、超高速ストレージを求めるならROCK 5Bなどの上位モデルを検討すべきです。
価格表
| 構成 | 価格(参考) |
|---|---|
| 2GB LPDDR4x | 約$53 |
| 4GB LPDDR4x | 約$69 |
| 8GB LPDDR4x | 約$86 |
| 16GB LPDDR4x | 約$126 |
| 32GB LPDDR4x | 約$203 |
※価格は販売店・為替により変動します。購入はRadxa公式のDistributors一覧経由で案内されています。
関連リンク
- 公式製品ページ:https://radxa.com/products/rock5/5c
- 公式Docs(製品紹介):https://docs.radxa.com/en/rock5/rock5c/getting-started/introduction
- 公式Docs(ハードウェアインターフェース):https://docs.radxa.com/en/rock5/rock5c/hardware-design/hardware-interface
- 公式Docs(OS導入ガイド):https://docs.radxa.com/en/rock5/rock5c/getting-started
- Distributors一覧:https://radxa.com/distributors
- Allnet China(販売店):https://shop.allnetchina.cn/products/rock-5c