Banana PiからBanana Pi BPI-CM6 が登場しました。SpacemiT K1(8コア 64-bit RISC-V)を搭載した、産業向けコンピュートモジュールです。
注目すべきは、AI 2.0 TOPSとRaspberry Pi CM4互換サイズを両立している点。エッジ推論や産業制御、教育用途など「I/Oは自分で設計したい」「温度範囲も気にする」タイプのプロジェクトに刺さる選択肢ですね。
ただし、RISC-Vのソフトウェア事情でハマる可能性は割り切りポイント。そこも含めて楽しめる人向けの製品といえるでしょう。
スペック
■ Banana Pi BPI-CM6 CPU SpacemiT K1(Octa-core X60、64-bit RISC-V) GPU IMG BXE-2-32(819MHz) NPU AI 2.0 TOPS(from RISC-V Core) メモリ 8GB・16GB LPDDR4(※LPDDR4X表記もあり:未確認) ストレージ eMMC 8・16・32・128GB(デフォルト16GB) 有線LAN RTL8211F PHY統合(RGMII)、IOボード側でGbE RJ45×2 無線LAN・BT SDIO Wi-Fi/BTモジュール(規格は未確認) 映像出力 HDMI 1.4、MIPI DSI カメラ MIPI CSI×3系統 USB USB 3.0、USB 2.0 拡張 PCIe 2.1(5レーン)、IOボードにM.2 M-KEY×2 I/O UART×10系統ほか サイズ 40×55mm(IOボード:56×85mm) 動作温度 -40〜85°C 電源 IOボード運用時は12V PD電源を推奨 OS Bianbu Linux、OpenWrt等
RISC-V 8コア+AI 2.0 TOPSを40×55mmに凝縮。CM4互換で既存資産も活かせる産業グレードモジュール。
IOボードにはM.2 M-KEY×2基、GbE×2ポートなど、現場で扱いやすいI/Oが揃っています。ただし、メモリ規格にLPDDR4・LPDDR4Xの両表記があり、どちらが正確かは公式情報で確認を推奨します。
特徴
SoC・CPU
BPI-CM6の核は、SpacemiT K1 (8コアの64-bit RISC-V)です。AI 2.0 TOPSを前面に押し出しており、RISC-Vでも推論用途を意識したモジュールとして設計されているのがわかりますね。
SpacemiT K1は、中国SpacemiT(進迪時空)が開発したRISC-VプロセッサでX60コアを8基搭載。クロックは最大1.6GHz程度とされており、省電力寄りのバランスです。同SoCは他にもMuse Book(ノートPC)やMuse Pi(SBC)などに採用実績があり、RISC-V向けLinuxディストリビューション「Bianbu」のリファレンスプラットフォームとしても機能しています。
GPUはImagination Technologies製のIMG BXE-2-32 (819MHz)を搭載。GUI表示や軽めのGPU処理まで含めたエッジ機器のベースとしては筋が良さそうです。
発熱や静音性については、モジュール単体では筐体や冷却機構が設計側依存になります。公式にTDPや消費電力の明記は見当たらないため、ベースボードと筐体込みで設計評価が必要です。
NPU・AI性能
AI性能は2.0 TOPS (from RISC-V Core)で、具体的なLLMベンチや対応フレームワークの保証は未確認です。ただし公式Docs側には「deepseek demo」への言及があり、少なくともAIデモを出す意思は見えます。
生成AIを何でもローカルで回す箱というより、「推論を現場で回すためのエッジ側コンピュート」に寄せた立ち位置です。小さめのモデルで現場推論、軽量な画像分類、音声キーワード検出あたりが現実的な入り口で、生成AIはできたら面白いが設計検証は必須という距離感がちょうどいいでしょう。
競合との比較
製品 NPU性能 SoC 特徴 BPI-CM6 2.0 TOPS SpacemiT K1(RISC-V 8コア) CM4互換・産業温度対応 Raspberry Pi 5 + Hailo-8L 13 TOPS BCM2712(Arm 4コア) エコシステム充実 Orange Pi AI Pro 8〜20 TOPS 昇騰310B/310 AI特化・Huawei系 Milk-V Jupiter 2.0 TOPS SpacemiT K1(RISC-V 8コア) Mini-ITXフォームファクタ
BPI-CM6は「RISC-V 8コア・CM4互換・産業温度対応」を一枚の基板に詰めている点が差別化ポイント。x86やArmエコシステムから離れてRISC-Vに振りたいプロジェクト、既存のCM4ベースボード資産を活かしたい場合に向いています。逆に、純粋なAI性能だけで比べるとHailo系やOrange Pi AI Proに軍配が上がりますね。
メモリとストレージ
メモリは8GB・16GB、ストレージはeMMC 8・16・32・128GBのSKUが示されています。購入時に容量を選ぶタイプで、ユーザーが後からメモリ増設する前提の記述は確認できませんでした。ここはRaspberry Pi CM系と同じく、設計思想としてオンボード固定の可能性が高いですが、公式が増設可否を明言していないので断定は避けます。
一方で、拡張ストレージはかなり現実的です。公式IOボードにはM.2 M-KEYが2本あり、Getting Startedでも「NVMe SSDの挿し方」を案内しています。NVMe運用は公式が想定しているとみてよいですね。
実用シーンとしては、NAS、ログ蓄積、エッジAIのデータ置き場、ローカルビルド環境など、eMMCだけだと苦しい用途に効いてきます。
外観
参考: Banana Pi 公式ドキュメント
「CM4互換」「RISC-V 8コア」「AI 2.0 TOPS」など、狙っている市場が一発でわかるヒーロー画像です。モジュール単体と、I/Oが揃ったボード構成のイメージが同居しているので、「結局どこまでがモジュール?」の誤解も減らせますね。
参考: Banana Pi 公式ドキュメント
SoC(SpacemiT表記の大きいチップ)と、メモリ・ストレージらしき実装が見える、いわゆる表面です。基板の四隅に取り付け穴があり、産業用途らしく固定して使う前提が強い印象。小型機器の中に収める設計がしやすそうです。
参考: Banana Pi 公式ドキュメント
背面側はボードtoボードのコネクタが目立っていて、「CM4互換ベースボードに載せる」思想が素直に出ています。端子が外に出ない=製品側でI/Oを自由設計できるので、ゲートウェイ・NAS・産業制御の専用機を作る時に強いタイプです。
参考: Banana Pi 公式ドキュメント
コンピュートモジュールはそれ自体が基板なので、いわゆる筐体内部の写真は公式では見当たりませんでした。代替として公式IOボード基板面を紹介します。M.2スロットや各種コネクタ位置が見え、NVMeやI/Oをどこに逃がすかの設計イメージが作りやすいのが助かります。
その他
ネットワーク
ネットワークはモジュール側にRTL8211F PHY統合の記載があり、IOボードではGbE×2ポートのRJ45が明記されています。無線は「SDIO Wi-Fi/BTモジュール」表記までで、Wi-Fi規格(Wi-Fi 5・6・6E等)は未確認です。
映像出力
映像はHDMI 1.4が明記されています。最大同時出力枚数や最大解像度の保証値は未確認ですが、インターフェースとしてはHDMIに加えてMIPI DSIもあるので、HDMI+MIPIパネル構成の製品設計はしやすそうです。
電源・OS
給電は、Getting Startedで準備物として「12V PD power supply」が明示されています。運用はIOボード前提で考えるのが無難です。OSはDocsに開発リンクやイメージ作成手順が整理されており、RISC-Vでもとりあえず動かすまでの導線が用意されています。
まとめ
BPI-CM6は「RISC-Vで、CM4サイズ互換で、AIもやる」という、刺さる人には刺さりすぎる産業向けコンピュートモジュールです。
エッジ推論や画像分類、音声認識といったAI用途はもちろん、産業制御・ゲートウェイ用途や専用NAS・ストレージサーバーの構築にも最適です。RISC-Vの教育・研究用としても、手頃で機能が揃ったプラットフォームとして重宝するでしょう。
「I/O構成は自分で決めたい」「温度範囲も気にする」といった要件を持つプロジェクトには強くおすすめできます。逆に、万人向けの「何でも動くRaspberry Pi互換機」を期待している人には、RISC-V特有のソフトウェア事情で躓く可能性があるため、そこは割り切れる人向けです。
無線規格や映像出力の保証値など、製品設計で最後に効く数字が未確認の部分もあります。購入前に公式DocsとSKUの突き合わせをおすすめします。
価格
販売元 価格(参考) 公式ショップ(8GB/16GB eMMC) $67.00〜 公式ショップ(16GB/32GB eMMC) $89.00〜 公式ショップ(16GB/128GB eMMC) $119.00〜
※価格・在庫は変動します。最新情報は公式ショップでご確認ください。
関連リンク