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Debian Linuxが動くArduino UNO Qを仕様からチェック

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Debian Linuxが動くArduino UNO Qを仕様からチェック

Arduinoは2025年10月7日に「Arduino UNO Q」を発表しました。Qualcomm Dragonwing QRB2210でDebian Linuxを動かしつつ、STM32U585でArduino互換(Zephyr)も扱える「二重脳」構成のUNOフォーム開発ボードです。USB-C 1ポートに集約した割り切り設計でSBC運用も視野に入りますが、USB PD(Power Delivery)対応ドングルが必須など、事前に確認したいポイントもあります。

Arduinoは2025年10月7日にArduino UNO Qを発表しました。Qualcomm Dragonwing QRB2210でDebian Linuxを動かしつつ、STM32U585でArduino互換(Zephyr)も扱える「二重脳」構成の開発ボードですね。

UNOフォームに収まる68.85×53.34mmのサイズ感で、Linuxアプリの実行とリアルタイムI/O制御を1枚で完結させたい人にはかなり刺さる構成です。

USB-C 1ポートに集約した割り切り設計でSBC(Single Board Computer)運用も視野に入りますが、USB PD(Power Delivery)対応ドングルが必須など、購入前に確認しておきたいポイントもあります。

目次

スペック

■ Arduino UNO Q
MPU(Linux)Qualcomm Dragonwing QRB2210(Quad-core Arm Cortex-A53 @ 2.0GHz)
GPUAdreno(3D graphics accelerator)
ISP2基(13MP×2 または25MP、いずれも30fps表記)
AIアクセラ搭載の記載あり(TOPS等の定量値は一次情報で未確認)
MCU(Arduino)STM32U585(Arm Cortex-M33 最大160MHz、フラッシュ2MB、SRAM 786KB)
メモリ2GB LPDDR4
ストレージ16GB eMMC(オンボード)
無線LAN・BTWi-Fi 5(2.4・5GHz)、Bluetooth 5.1(オンボードアンテナ)
USBUSB-C 1ポート(ホスト・デバイス切り替え、給電、映像出力)
映像出力USB-C(DP Alt Mode)。JMEDIAヘッダにMIPI DSIピンの記載あり
オーディオJMISC上にMicrophone IN・Headphone OUT・Line OUTの記載あり
追加機能8×13 LEDマトリクス、RGBユーザーLED 4個、User button
拡張UNO互換ヘッダ、底面高速コネクタ(JMEDIA/JMISC等)、Qwiic(I2C、3.3V)
電源USB-C 5V最大3A、VIN 7〜24V
動作温度-10〜60°C(周囲温度)
OSDebian Linux(MPU側)、Zephyr OS(MCU側:Arduino Core)
コンテナDocker・Docker Compose対応の記載あり
サイズ68.85×53.34mm(UNOフォーム)

Debian Linuxが動くQualcomm MPUと、Arduino互換MCUを同居させた「二重脳」構成を、UNOフォームの68.85×53.34mmに詰め込んだハイブリッド開発ボードです。SBCとしての周辺I/OはUSB-Cドングル前提で、ドングル選びを間違えると起動しないことがある点には注意が必要です。

SoC(QRB2210)の正体

搭載されているQualcomm Dragonwing QRB2210は、スマートフォン向けSnapdragon 662やSnapdragon 460と同系統のSoCをIoT・組み込み向けに派生させたものです。CPUコアはArm Cortex-A53のクアッドコア(最大2.0GHz)で、64bitのLinuxを動かすには十分なパワーがあります。

GPUはAdreno(具体的な世代は未公開だが、600番台の下位と推測される)で、軽い3D描画やUI処理なら問題ありません。ISPは2基搭載で、カメラ入力を2系統同時に扱えるのがうれしいポイントですね。

ただし、Raspberry Pi 5(Cortex-A76 @ 2.4GHz × 4)やRK3588搭載ボード(Cortex-A76 × 4 + A55 × 4)と比べると、純粋な演算性能では見劣りするのも事実。UNO Qの強みはCPUパワーではなく、MCUとの同居による「二重脳」構成とUNOフォームの拡張性にあります。

特徴

「二重脳」構成が一番の売り

UNO Qの芯は、Linux(Debian)を動かせるMPU(QRB2210)と、リアルタイム制御向けMCU(STM32U585)を同一基板に載せた構成です。 この手のボードは、Linux側でネットワーク・UI・ログ収集・コンテナ実行を担当しつつ、MCU側でタイミングに厳しいI/Oや省電力の常時監視を担当する、といった役割分担がしやすいんですよね。

公式ストアの説明では、Arduino App Labがプリインストールされており、Arduinoスケッチ・Python・コンテナ化したAIモデルを統合的に扱える、という方向性も示されています。 「Arduinoだけだと重い処理がつらい、でもLinux SBCだとI/Oが面倒」という溝を埋めに来た一台、と捉えるとわかりやすいです。

SBC運用のキモ:USB-CドングルはPD必須

UNO Qの外部ポートはUSB-C 1つに集約されています。キーボード・マウス・ディスプレイ出力・USB機器・有線LANなどは、基本的にUSB-Cドングル側で拡張する前提です。

注意したいのは、公式FAQでUSB PD対応かつ映像出力対応のUSB-Cドングルを使うこと、そしてUSB PDがないとブートしない旨が明記されている点です。 SBCとして雑に運用するなら、まずUSB PDパススルーに対応したUSB-Cハブを用意するのがスタートラインになります。

AI・ビジョン:ISPは強そう、でも定量比較は難しい

Adreno GPUに加えてAIアクセラ搭載の記載があり、ISP 2基も明記されています。ビジョン用途だと、推論そのものよりも「入力画が安定して処理パイプラインが組みやすい」ほうが地味に効いてくるので、ここは気になるポイントです。

ただし、AIアクセラについてTOPSなどの定量値は未確認で、他のSBCや外付けAIアクセラレータと単純比較しにくいのが正直なところです。

競合との比較(AI・NPU性能)

ボードNPU/AIアクセラTOPS価格帯
Arduino UNO QQualcomm AIアクセラ(詳細未公開)未確認$44〜
Raspberry Pi 5 + Hailo-8LHailo-8L(M.2接続)1360+60 + 70前後
Orange Pi 5(RK3588S)Rockchip NPU6$90前後
NVIDIA Jetson Orin NanoNVIDIA GPU + DLA40$199〜

UNO Qは、UNOフォームのヘッダとMCUを同居させた構成が特徴で、Linux側のアプリとリアルタイムI/Oを1枚でまとめたい人に向きます。純粋なAI性能を追求するならJetsonやHailo組み合わせが有利ですが、MCU併載による開発体験の統合という点ではUNO Qに軍配が上がりますね。

GPIO/電圧:UNO互換でもそのまま刺すのは危険

UNO互換ヘッダがあるので、物理的には従来UNOシールドを載せられます。ただしデータシートでは、I/Oは3.3V系で、A0/A1は5V非対応、さらにJCTLが1.8V系である旨が明記されています。5V前提の古いシールドを流用する場合は、レベル変換や信号の適合確認が必須です。

逆に言えば、最近の3.3V系センサーやQwiic/STEMMA QTデバイスとの相性は良好で、SparkFunやAdafruitのエコシステムとつなぎやすいのはうれしいポイントですね。

ブート/ストレージ:eMMC前提で「起動が素直」

ストレージは16GB eMMCオンボードで、「SDカード不要」として記載されています。microSDスロットを探したり、カード相性に悩んだりしなくてよいのは地味にうれしい点ですね。OSの再フラッシュや更新については、公式チュートリアルが用意されています。

拡張:底面高速コネクタは魅力、M.2やPCIeは未確認

UNO互換ヘッダに加えて、底面に高速コネクタ(JMEDIA/JMISC等)を設け、カメラ・ディスプレイ・オーディオなどへの拡張が示されています。純正やサードパーティの拡張キャリアが出てくれば、さらに面白くなりそうですね。

一方、M.2スロットやPCIe(世代やレーン)については未確認です。NVMe SSDや外付けAIアクセラレータを直接つなぎたい場合は、底面コネクタ経由のキャリアボード待ちになるかもしれません。

外観

Arduino UNO Q 基板上面(TOP)
参考:Arduino Store(EU)製品ページ

TOP面は、UNO互換ヘッダとQwiicが素直に載っていて、いつものUNO感があります。 一方で中央付近に主要チップが見えたり、基板上の雰囲気が「マイコンボード」ではなく「小型SBC寄り」なのも面白いところです。

Arduino UNO Q 基板下面(BOTTOM)
参考:Arduino Store(EU)製品ページ

底面側には、底面高速コネクタ群が大きく実装されているのが確認できます。 UNOシールド互換の世界観を保ちつつ、カメラやディスプレイなど次の拡張へ逃がす道も用意している感じですね。

Arduino UNO Q 斜視(PORTS周辺)
参考:Arduino Store(EU)製品ページ

USB-Cが唯一の外部ポートで、給電・周辺機器・映像出力はドングルで拡張する設計です。 SBC運用を想定するなら、ここは「ドングル選びが実質I/O選び」になります。

まとめ

Arduino UNO Qは、UNOフォームのいつもの拡張性と、Debian Linuxを動かせるMPUを同居させた、SBC寄りの開発ボードです。USB-C 1本で完結させる思想は明快で、PC接続での開発や、ドングル前提の簡易SBC運用に向きます。

Linuxアプリやコンテナを使いつつ、センサー制御はMCU側に任せたい人にとって、この「二重脳」構成は非常に魅力的です。UNOフォームのシールドやQwiicデバイス資産を活かしたい、Dockerでエッジ開発を進めたいというニーズにもしっかり応えてくれます。

一方で、5V前提の古いUNOシールド資産をそのまま活かしたい人には、電圧レベルの違いが壁になります。また、HDMIや有線LANが最初から載っているSBCらしい構成を求める場合や、高性能なAI推論が必要な場合は、他の専用ボードを選んだほうが無難でしょう。

価格表(2025年12月時点)

販売元モデル価格(税込参考)
Arduino Store(EU)2GB RAM / 16GB eMMC€47.58
Arduino Store(US)2GB RAM / 16GB eMMC$44.00
Arduino Store4GB RAM(近日発売予定)未発表

※スタンドアロン運用(ドングル経由でキーボード・マウス・ディスプレイ接続)を想定するなら、公式FAQでは4GB RAMバリアントを推奨しています。

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