
Boardcon Embedded DesignはRockchip RK3576採用の「Boardcon Compact3576」を発表しました。SoMとベースボードに分かれたモジュール分離型で、6 TOPS NPU・HDMI 2.1出力・HDMI入力など充実したI/Oが特徴です。量産や派生ボード設計を見据えた構成がうれしいポイントですね。
Boardcon Embedded Designは2025年7月に、Boardcon Compact3576を発表しました。Rockchip RK3576採用のSBCで、8コアCPUと6 TOPS NPUを搭載しています。
本機の大きな特徴は、SoM(System on Module)とベースボードを分けたモジュール分離型の構成にあります。机上で動かす遊びというより、量産や派生ボード設計に繋げたい人に刺さる方向性なんですよね。HDMI 2.1出力と入力を両方備えているのも、映像系用途を考えるとうれしいポイントです。
この記事では、公式スペックをもとにCompact3576の特徴と、購入前に確認したい項目を整理します。
スペック
| ■ Boardcon Compact3576 | |
|---|---|
| SoC | Rockchip RK3576(4×Cortex-A72@2.2GHz + 4×Cortex-A53@1.8GHz) |
| MCU | ARM Cortex-M0(シングルコア) |
| GPU | Mali G52 MC3(OpenGL ES 3.2, OpenCL 2.0, Vulkan 1.1) |
| NPU | 6 TOPS |
| メモリ | 4GB(最大8GB) |
| ストレージ | eMMC 32GB(最大128GB)、microSDスロット、M.2ソケット |
| ネットワーク | GbE(Realtek RTL8211F)、Wi-Fi 5(2.4G/5G 2T2R)+ BT 5.0、mPCIe(4G LTE対応) |
| 映像出力 | HDMI 2.1(4K@120fps)、DP to HDMI 2.0 |
| 映像入力 | HDMI IN(HDMI to MIPI CSI) |
| USB | 2×USB 3.0 Host(Type-A)、1×USB 3.0 OTG/Host(Type-A) |
| オーディオ | 3.5mmジャック(入出力)、S/PDIF出力、HDMI 8ch |
| 電源 | 12V DC via USB-C(最低3A) |
| その他 | RTC(バッテリー接続可)、IR、デバッグ端子(3ピン)、Reset/Recovery/Powerボタン |
| 対応OS | Android 14、Debian 12 |
| 寸法 | ベースボード 152.5×83mm、CPUモジュール 57.5×44.0mm |
8コアCPU+6 TOPS NPU+HDMI 2.1入出力を備えたモジュール分離型SBC。 量産前提の設計と充実したI/Oが魅力ですが、価格は要問い合わせです。
特徴
SoC:RK3576の実力と立ち位置
Compact3576に搭載されるRockchip RK3576は、Cortex-A72×4(2.2GHz)+ Cortex-A53×4(1.8GHz)のbig.LITTLE構成を採用した8コアSoCです。GPUはMali G52 MC3で、OpenGL ES 3.2やVulkan 1.1に対応。グラフィックス性能は上位のRK3588(Mali G610 MC4)には及びませんが、4Kデコードやライトな3D描画には十分なスペックですね。
RK3576のポジションは、RK3566/RK3568の後継世代として「コスパとNPU性能のバランス」を狙ったところにあります。製造プロセスは8nmで、先代の22nmから大幅に微細化。電力効率が改善されているのも、組み込み用途ではうれしいポイントです。
一言評価:RK3588ほどのパワーは不要だが、RK3566では物足りない用途にちょうどいいミドルレンジSoC。
NPU・AI性能:6 TOPSの使いどころと競合比較
RK3576は6 TOPS(INT8)のNPUを内蔵しています。これは上位のRK3588と同等の数値ですが、RK3588がトリプルコアNPUなのに対し、RK3576はおそらくデュアルコア構成と推測されます(公式の詳細仕様は未公開)。
| SoC | NPU性能(INT8) | 主な用途 |
|---|---|---|
| Rockchip RK3576 | 6 TOPS | エッジAI推論、物体検出 |
| Rockchip RK3588 | 6 TOPS(トリプルコア) | 高負荷AI、マルチストリーム推論 |
| Rockchip RK3566/RK3568 | 0.8 TOPS | 軽量AI、画像分類 |
| Raspberry Pi 5 + Hailo-8L | 13 TOPS | 外付けアクセラレータ構成 |
RK3576の6 TOPSは、リアルタイム物体検出やスマートリテール向けの推論用途には実用的な数値です。ただし、本格的なマルチストリーム推論やLLM推論にはRK3588クラスか外付けアクセラレータが必要になるでしょう。
Compact3576の強みは、NPU性能だけでなく「モジュール分離型でカスタマイズしやすい」点にあります。エッジAIの量産案件で、筐体やI/O配置を自社要件に合わせたい場合に選択肢になりますね。
モジュール分離型:量産・派生ボードに効く設計
Compact3576は、CPUモジュール(CM3576 SOM、57.5×44.0mm)とベースボード(152.5×83mm)を分離した構成です。この設計の利点は:
- 量産時のコスト最適化:ベースボードを自社設計に切り替え、必要なI/Oだけ搭載できる
- 派生ボード展開:同じSOMで用途別のベースボードを複数設計可能
- 長期供給:SOMとベースボードを別々に在庫管理できる
一方で、評価段階では「ベースボード込みのキット」を使うことになるため、Raspberry Pi的な「買ってすぐ遊ぶ」体験ではありません。量産を見据えた人向けの製品ですね。
映像入出力:HDMI 2.1出力+HDMI入力の両搭載
映像周りで目を引くのは、HDMI 2.1出力(4K@120fps対応)とHDMI入力を両方備えている点です。
- HDMI 2.1出力:4K@120fpsまで対応。デジタルサイネージや高リフレッシュレートのディスプレイ用途に
- DP to HDMI 2.0:デュアルディスプレイ構成も可能
- HDMI IN:HDMI to MIPI CSI変換経由。映像キャプチャ・解析・表示のパイプライン構築に使える
HDMI入力を持つSBCは意外と少ないので、「外部映像ソースを取り込んで処理する」ユースケース(ビデオスイッチャー、映像解析など)には刺さる仕様です。
I/O・拡張:USB 3.0×3、mPCIe、M.2で手堅い構成
I/O周りは、このクラスのSBCとしては手堅くまとまっています。
- USB 3.0:Type-A×3(Host×2 + OTG/Host×1)。USBカメラやSSDの接続に
- ネットワーク:GbE(Realtek RTL8211F)+ Wi-Fi 5/BT 5.0内蔵
- mPCIe:Nano SIMスロット付きで4G LTEモジュール対応
- M.2:NVMe SSD接続可能(詳細なKey・サイズ対応は要確認)
- オーディオ:3.5mmジャック + S/PDIF + HDMI 8ch
GbEが1000Mbps止まり(2.5GbE非搭載)なのは惜しいところ。NAS用途やネットワーク帯域を使い切る用途には向きません。
電源:12V DC via USB-C(最低3A)
電源は12V DC入力で、USB-Cコネクタ経由。最低3A(36W)が要求されます。USB PD対応のアダプタを使う場合は、12V出力に対応していることを確認してください。5V入力では動作しません。
外観


まとめ
Boardcon Compact3576は、RK3576採用のモジュール分離型SBCです。8コアCPU+6 TOPS NPU+HDMI 2.1入出力という構成で、量産や派生ボード設計を前提としたユーザーに向いています。
量産や派生ボード設計を見据えてSoM分離型のメリットを活かしたい人や、HDMI入力を使った映像解析システムを構築したい開発者には、非常に適した選択肢です。エッジAI推論(物体検出など)を組み込み機器に実装するベースとしても有望ですね。
一方で、Raspberry Piのように「買ってすぐ遊ぶ」体験を期待している人には不向きです。また、2.5GbE以上のネットワーク帯域が必要なNAS用途や、価格重視でまずは安価に動かしてみたいというニーズにはマッチしないでしょう。
| 購入先 | 価格(税別) | 備考 |
|---|---|---|
| Boardcon(公式) | 要問い合わせ | market@armdesigner.com |
| ARMDESIGNER(公式関連) | 要問い合わせ | 同上 |
価格が非公開なのは導入検討の障壁になりますが、量産前提で見積もりを取る流れであれば問題にならないでしょう。評価用に1台だけ欲しい場合も、まずは問い合わせてみてください。
関連リンク
- 公式製品ページ:Boardcon Compact3576
- 公式SOMページ:CM3576 SOM
- リリース告知(中文):Boardcon EM3588 & Compact3576発表
- 公式購入窓口:Boardcon Order
- Rockchip SoC比較表(公式):Rockchip SoC Comparison
- 参考記事:CNX-Software - Boardcon Compact3576 Review
