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38mm角のMini AI SBC「Firefly CAM-3576Q38」

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38mm角のMini AI SBC「Firefly CAM-3576Q38」

Fireflyは超小型Mini AI MainboardのCAM-3576Q38を発表しました。Rockchip RK3576(4×A72+4×A53)と6 TOPS NPUを38mm角の基板に凝縮し、産業用カメラやエッジAI機器の組み込み用途を想定した設計です。FPC経由のI/O設計が中心で、量産を前提にしたカスタム設計に向いています。

FireflyからCAM-3576Q38が登場しました。38mm角という切手サイズの基板に、Rockchip RK3576と6 TOPS NPUを詰め込んだMini AI Mainboardです。

産業用カメラやエッジAI機器への組み込みを強く意識した設計になっていて、I/OはFPC経由が中心なんですよね。量産を前提にしたカスタム設計に向いている反面、Raspberry Piのように「買ってすぐ動かす」体験とは異なります。

ターゲットは明確で、小型筐体にAI処理能力を組み込みたい産業向け開発者です。趣味でブレッドボード遊びをしたい人には向きませんが、その割り切りが本機の強みでもあります。

目次

スペック

■ Firefly CAM-3576Q38
CPURockchip RK3576(4×Cortex-A72+4×Cortex-A53、最大2.2GHz)
GPUMali-G52 MC3@1GHz
NPU6 TOPS(INT4・INT8・INT16・FP16・BF16・TF32対応)
ISP16MP ISP内蔵(低光量ノイズ除去・HDR対応)
メモリLPDDR4・LPDDR4x・LPDDR5(4GB・8GB・16GB選択可)
ストレージeMMC(16GB〜256GB)+TFカードスロット
無線LAN・BTWi-Fi 6(2.4GHz・5GHz)オンボード
有線LAN100Mbps Ethernet(8P-1.25mmコネクタ)
映像入力MIPI-CSI DPHY(1×4Lane or 2×2Lane、40pin-0.5mm)
映像出力8K@30fps・4K@120fpsデコード、4K@60fpsエンコード(端子実装は基板設計依存)
USBUSB2.0・Type-C(Device)
拡張24pin FPC(USB2.0・ADC・I2C・UART・10 GPIO)、RS485
サイズ38.09×38.11×11.54mm
電源DC 12V入力(8P-1.25mmコネクタ)
対応OSLinux・Buildroot・RTLinx

6 TOPS NPU+RK3576+LPDDR5を、38mm角の極小基板にまとめた産業・カメラ組み込み向けMini AI SBCです。

ただし、I/OがFPC経由中心のため、NVMeやM.2拡張を手軽に使いたい人には向きません。設計の自由度を求めるカスタム開発・量産用途がメインターゲットです。

特徴

SoC・CPU・NPU

CPUはRockchip RK3576のオクタコア構成で、4×Cortex-A72(高性能コア)と4×Cortex-A53(省電力コア)のbig.LITTLEアーキテクチャを採用しています。最大2.2GHzで動作し、エッジ向けSBCとしては十分な処理能力ですね。

GPUはMali-G52 MC3@1GHzで、145 GFLOPSの演算性能を持っています。映像系は8K@30fps・4K@120fpsデコードと4K@60fpsエンコードに対応しているので、カメラ入力やリアルタイム映像処理を前提にした設計であることがわかります。

NPUは6 TOPSで、INT4・INT8・INT16・FP16・BF16・TF32に対応しています。デュアルコア構成で、協調動作と独立動作の両方に対応しているのがポイントです。

NPU競合比較

製品NPU性能サイズ特徴
Firefly CAM-3576Q386 TOPS38×38mm超小型・産業組込み向け
Raspberry Pi 5+Hailo-8L13 TOPS85×56mm+HAT拡張HAT方式・汎用
Orange Pi 5 Pro8 TOPS89×56mmRK3588S・汎用SBC
Radxa ROCK 5A6 TOPS85×56mmRK3588S・汎用SBC

競合と比べると、NPU性能は6 TOPSと控えめですが、38mm角という超小型サイズに収まっている点が差別化ポイントです。ただし、この小ささはトレードオフとして熱設計や拡張性に制約を生む可能性があります。

LLM対応

公式によると、Transformerアーキテクチャベースの大規模モデルのプライベートデプロイに対応しています。対応モデルは以下のとおりです。

  • Gemmaシリーズ
  • ChatGLMシリーズ
  • Qwenシリーズ
  • Phiシリーズ

CNN・RNN・LSTMなどの従来型ネットワークにも対応しており、TensorFlow・PyTorch・ONNX・Caffeなど主要フレームワークをサポートしています。YOLOによるリアルタイム物体検出にも対応しているので、監視カメラやドライブレコーダーへの組み込みに向いていますね。

メモリとストレージ

メモリはLPDDR4・LPDDR4x・LPDDR5から選択可能で、容量も4GB・8GB・16GBのオプションがあります。LPDDR5まで対応しているのは、このサイズのボードとしてはうれしいポイントですね。

ストレージはeMMC一択で、16GB〜256GBまでのオプションが用意されています。TFカード(microSD)スロットも搭載しているので、追加ストレージは確保できます。ただし、M.2やPCIeの明記がないため、NVMe拡張については未確認です。

拡張・I/O

本機の特徴的なポイントは、I/OがFPC経由中心な点です。24pin FPCでUSB2.0・ADC・I2C・UART・10 GPIOを引き出す構成で、一般的なSBCのようなピンヘッダではありません。

これは量産を前提にした設計で、筐体・基板間をFPCでつなぐカスタム設計に向いています。一方で、個人や趣味での「ブレッドボードにジャンパ線を挿して遊ぶ」用途には不向きですね。

GPIO信号は3.3Vと1.8Vが混在しているので、接続デバイスのレベル互換性には注意が必要です。

映像入出力

  • 入力:MIPI-CSI DPHY(1×4Lane or 2×2Lane、40pin-0.5mm)
  • ISP:16MP内蔵、低光量ノイズ除去・120dB HDR対応
  • 出力:8K@30fps・4K@120fpsデコード、4K@60fpsエンコード(端子実装は基板設計依存)

AI-ISPによる低ノイズ画像処理にも対応しており、監視カメラやスマートカメラへの組み込みを強く意識した設計です。

ネットワーク

ネットワークは100Mbps Ethernetのみで、8P-1.25mmコネクタで引き出す方式です。筐体側でRJ45化する設計が必要になります。GbEが必要な用途には不向きなので、ここは明確なデメリットですね。

Wi-Fi 6(2.4GHz・5GHz)はオンボードで搭載されているので、無線接続がメインなら問題ありません。

電源・熱・SKU

電源はDC 12V入力で、8P-1.25mmコネクタ経由です。一般的なDCジャックやUSB-C給電ではないため、電源周りの設計が必要になります。

動作温度はSKUによって異なります。

SKU型番動作温度CPU周波数
CommercialCAM-3576Q38-20℃〜60℃最大2.2GHz
IndustrialCAM-3576JQ38-40℃〜85℃最大1.6GHz
AutomotiveCAM-3576MQ38-40℃〜85℃最大1.6GHz

Industrial・Automotiveは動作温度を拡張した代わりに、CPU周波数が1.6GHzに制限されています。用途に応じて適切なSKUを選択する必要がありますね。

冷却方式(ヒートシンク・ファンの有無)は未確認のため、筐体設計時は熱対策を別途検討してください。

対応OS

  • Linux OS(Debian 12ベースが提供)
  • Buildroot
  • RTLinux(リアルタイムカーネル)

RTLinuxカーネルに対応しているのは産業用途ではうれしいポイントです。リアルタイムネットワーク・Flexbus・ハードウェアリソース分離・DSMCなど、産業向け機能もサポートしています。

まとめ

Firefly CAM-3576Q38は、38mm角の超小型サイズにRK3576+6 TOPS NPUを凝縮した、産業用カメラ・エッジAI機器向けのMini AI SBCです。

小型筐体にAI処理能力を組み込みたい産業向け開発者や、カスタム基板設計・量産を前提に、スマートカメラや監視システムを開発している人にはドンピシャな製品です。

一方で、Raspberry Piのように買ってすぐ動かしたい人や、趣味でブレッドボード遊びをしたい人には全く向きません。また、GbEやNVMeなどの高速I/Oが必要な場合も、インターフェースの制約から選択肢から外れるでしょう。

価格(参考)

構成価格
CAM-3576Q38(構成未確認)未公開
Industrial・Automotive版未公開

価格は公式ストアおよび製品ページで未公開のため、Firefly公式または正規販売代理店への問い合わせが必要です。

総評

38mm角という超小型サイズと6 TOPS NPUの組み合わせが本機の最大の強みです。FPC経由のI/O設計は万人向けではありませんが、量産・組み込み用途では逆に設計の自由度が高まります。GbE非搭載やNVMe未対応など制約もありますが、ターゲットを絞った潔い設計と言えますね。

関連リンク

公式

参考