
IBASE IBR500は、MediaTek Genio 700/510を搭載した3.5インチサイズのAIエッジコンピューティング向けSBCです。3.2 TOPSのAI性能と4Kデュアル出力を備え、省電力ながらエッジAIやサイネージ用途に最適化されています。
IBASEが発表した「IBR500」は、MediaTek Genio 700/510を搭載した3.5インチSBCです。産業グレードの信頼性を求めるユーザーにとって、注目の1台ですね。
本機は省電力ながら3.2 TOPSのAI推論性能を備えており、エッジAIゲートウェイやデジタルサイネージ、産業用制御端末などの用途に最適化されています。Raspberry Piのような趣味用途というより、現場で安定稼働させるためのボードなんですよね。
ファンレス設計で147×102mmのコンパクトな筐体に収まる点も、組み込み用途ではうれしいポイント。今回は、IBR500のスペックと特徴を詳しく見ていきましょう。
スペック
| ■ IBASE IBR500 | |
|---|---|
| CPU | MediaTek Genio 700(MT8390)/ 510(MT8370) |
| CPUコア | 2× Cortex-A78 2.2GHz + 6× Cortex-A55 2.0GHz |
| GPU | ARM Mali-G57 MC3 |
| NPU | 3.2 TOPS(INT8) |
| メモリ | 4GB / 8GB LPDDR4(4000MT/s) |
| ストレージ | 64GB / 128GB eMMC 5.1 |
| ネットワーク | 1× GbE LAN |
| 映像出力 | HDMI 2.0(4K60)+ HDMI 1.4(4K30) |
| 拡張スロット | M.2 Key E 2230(Wi-Fi 6 + BT 5.2対応) |
| USB | USB 3.0 + micro USB OTG |
| 電源 | 12V DC-in |
| サイズ | 147 × 102 mm(3.5インチ) |
| OS | Yocto Linux 5.15 / Android 14 / Ubuntu |
産業用として必要十分なスペックを、省電力パッケージにまとめた堅実な構成です。
3.5インチという産業用では一般的なフォームファクタに、ARM系のパワフルなGenio SoCを詰め込んでいます。特に3.2 TOPSのNPU性能は、リアルタイムの画像認識や物体検出に活用できる水準ですね。
特徴
CPU / SoC
MediaTek Genio 700(MT8390)は、AIoT向けに設計されたオクタコアSoCです。高性能コアとして2基のCortex-A78(2.2GHz)、効率コアとして6基のCortex-A55(2.0GHz)を搭載するbig.LITTLE構成を採用しています。
このSoCの面白いところは、MediaTekがスマートフォン向けで培った省電力技術を産業用途に転用している点ですね。Dimensityシリーズで実績のある電力管理ノウハウが、エッジデバイスでも活きています。処理能力と消費電力のバランスが優れているため、ファンレス運用が可能になっているわけです。
下位モデルのGenio 510(MT8370)も選択可能で、こちらはCortex-A73ベースのクアッドコア構成。AI性能は控えめになりますが、さらに省電力な用途に向いています。
Dimensity譲りの省電力設計と、産業グレードの長期供給保証が両立している点が魅力です。
NPU・AI性能
IBR500の大きな特徴が、3.2 TOPSのNPU性能です。これはエッジAI処理において、実用的な推論速度を実現できる水準ですね。
競合製品と比較してみましょう:
| 製品 | SoC | NPU性能 |
|---|---|---|
| IBASE IBR500 | MediaTek Genio 700 | 3.2 TOPS |
| Raspberry Pi 5 | BCM2712 | NPUなし(CPU/GPU推論のみ) |
| NVIDIA Jetson Nano | Tegra X1 | 0.5 TFLOPS(GPU) |
| NVIDIA Jetson Orin Nano | Orin | 20〜40 TOPS |
| Rockchip RK3588搭載機 | RK3588 | 6 TOPS |
Raspberry Pi 5にはNPUが搭載されていないため、AI推論はCPU/GPUに頼ることになります。一方、Jetson Orin Nanoは圧倒的なAI性能を持ちますが、消費電力と価格も高め。IBR500は「Raspberry Piでは物足りないが、Jetsonまでは必要ない」という中間ニーズに刺さる製品と言えます。
具体的には、YOLOv5などの軽量な物体検出モデルをリアルタイムで動かしたり、顔認証・人物検知などの用途に適しています。ただし、大規模な生成AIモデル(LLMなど)のローカル実行は厳しいので、そこは期待しないでください。
メモリとストレージ
メモリはLPDDR4 4GBまたは8GB(4000MT/s)をオンボードで搭載しています。産業用SBCとしては標準的な構成ですね。8GBモデルなら、Linuxでの開発作業やマルチタスク処理も余裕を持ってこなせます。
ストレージも64GBまたは128GBのeMMC 5.1が実装されており、SKUによって選択可能。OSとアプリケーションを収めるには十分な容量です。追加ストレージが必要な場合は、USBポート経由で外付けSSDを接続する形になります。
M.2 Key E 2230スロットは主にWi-Fi/Bluetoothモジュール用ですが、Wi-Fi 6(2T2R)とBluetooth 5.2に対応したモジュールの追加が容易です。センサーデータの収集と無線送信を行うIoTゲートウェイとしての運用が捗りそうですね。
映像出力とインターフェース
映像出力はHDMIが2ポートあり、HDMI 2.0(4K60Hz)とHDMI 1.4(4K30Hz)のデュアル表示が可能です。これはデジタルサイネージ用途では大きなアドバンテージですね。
例えば、メインディスプレイに商品プロモーション動画を4K60fpsで流しつつ、サブディスプレイに価格情報を表示するといった使い方ができます。ARM系SBCで4K60Hz出力に対応している製品は意外と少ないので、ここはうれしいポイントです。
USB 3.0ポートやmicro USB OTGも備えており、周辺機器の接続性も確保されています。GbE LANポートも搭載しているため、有線ネットワーク環境での安定運用が可能です。
OS対応
サポートされるOSは以下の3種類:
- Yocto Linux 5.15:組み込み向けにカスタマイズしやすい軽量Linux
- Android 14:タッチパネル端末やキオスク用途に最適
- Ubuntu:開発環境の構築が容易
開発環境に合わせて柔軟に選択できるのは、産業用SBCとして重要なポイントです。特にAndroid 14対応は、既存のAndroidアプリ資産を活用したい場合に役立ちます。
外観

産業用らしい無骨なデザインですが、主要なI/Oが片面に集約されているため、筐体への組み込みや配線は比較的スムーズに行えそうです。
147×102mmのフットプリントは、3.5インチHDDとほぼ同じサイズ。既存の産業用筐体にそのまま収まるケースも多いでしょう。ファンレス設計なので、可動部品がなく長期間の安定稼働が期待できます。
なお、IBR500をベースにした完成品システム「ISR500」も用意されています。こちらは堅牢な筐体に収められたファンレスエッジシステムで、より過酷な環境での運用に対応しています。
想定される用途
IBR500が活躍しそうなシーンをいくつか挙げてみます:
- デジタルサイネージ:4Kデュアル出力を活かした店舗・施設向けディスプレイシステム
- スマートリテール:来店者カウントや動線分析などのAIカメラシステム 工場の制御パネルやタッチ操作端末といった産業用HMI用途から、センサーデータの収集・前処理を行うIoTゲートウェイ、さらには量産前の組み込みシステムプロトタイピングまで、幅広い産業分野での活用が期待されています。特に、Androidベースの産業用タブレットやキオスク端末のコントローラー部として採用されるケースが多いようです。
特に、Androidベースの産業用タブレットやキオスク端末のコントローラー部として採用されるケースが多いようです。
まとめ
IBASE IBR500は、MediaTek Genioの省電力性と3.2 TOPSのAI性能を兼ね備えた、産業用グレードの3.5インチSBCです。
「Raspberry Piでは信頼性や長期供給に不安がある」「Jetsonほどの高性能は必要ないがAI処理は欲しい」というニーズに、ピンポイントで応える製品と言えます。4Kデュアル出力が必要なサイネージ用途や、ファンレスで安定稼働させたいエッジAI端末には特に向いていますね。
一方で、コンシューマー向け製品のようなコミュニティサポートは期待しにくいため、ドキュメントを読みこなせる開発者・システムインテグレーター向けの機材です。価格も要問い合わせとなっており、趣味で気軽に試すには敷居が高いかもしれません。
価格
| 販売元 | 価格 | 備考 |
|---|---|---|
| IBASE(直販) | 要問い合わせ | 産業向けBtoB販売 |
| 代理店経由 | 要問い合わせ | 国内代理店あり |
※ 産業用SBCのため、一般的なSBCのような小売価格は公開されていません。導入を検討する場合は、IBASEまたは代理店への問い合わせが必要です。
