
Axiomtek KIWI330は、72×56mmという極小サイズにIntel Amston Lake/Alder Lake-Nプロセッサを搭載したSBCです。LPDDR5メモリやNVMeストレージをオンボードで備え、省エネと高性能を両立しています。
産業用組み込みボードで定評のあるAxiomtekから、1.6インチ級の超小型SBC「KIWI330」が登場しました。 72×56mmという名刺よりも小さなサイズに、Intel Amston Lake/Alder Lake-Nプロセッサを詰め込んでいます。
このクラスのSBCでLPDDR5とNVMe SSDをオンボード搭載しているのは珍しく、省スペースかつキビキビ動くボードを探している方には刺さる一台ですね。 エッジAIゲートウェイや産業用端末として、ファンレス運用も視野に入れた設計になっています。
スペック
| ■ Axiomtek KIWI330 | |
|---|---|
| CPU | Intel Amston Lake / Alder Lake-N (N50等) |
| メモリ | 4GB LPDDR5 (オンボード) |
| ストレージ | 64GB NVMe (BGAオンボード) |
| ネットワーク | なし (M.2等で拡張) |
| 映像出力 | eDP / USB-C (DP Alt) |
| 拡張スロット | M.2 Key E 2230 |
| 電源 | 12V DC-in (Phoenix) |
| サイズ | 72 x 56 mm |
名刺より小さいのにNVMe搭載という、サイズと性能のバランスが光る一枚です。
このサイズでIntel x86プロセッサと高速ストレージを両立させているのは、なかなか見ないですね。
特徴
CPU / SoC
SoCにはIntel Amston Lake / Alder Lake-N(N50やx7211REなど)を採用しています。 この2つのプロセッサ、実は同じ「Intel 7」プロセス(旧10nm Enhanced SuperFin)で製造されており、どちらも効率コア(E-core)のみで構成されているんですよね。
Amston Lake(Atom x7000シリーズ) は組み込み・産業用途向けに設計されたSoCで、Intel Atom x7211REは2コア/2スレッド構成。TDP 6Wという超省電力でありながら、長期供給保証(CNDA:15年保証)が付いているのが産業用途では安心材料です。動作温度も-30℃〜+60℃と広く、過酷な環境にも対応します。
Alder Lake-N(Processor N50) はコンシューマ向けエントリーSoCで、こちらも2コア/2スレッド、TDP 6W。ただしターボブースト時は最大3.4GHzまで上がるので、バースト的な処理には強みがあります。動作温度は0℃〜+60℃とやや狭くなりますが、オフィスや店舗用途なら問題ないでしょう。
競合との比較 として、同じ省電力x86では以下のような選択肢があります:
- Intel N100(Alder Lake-N): 4コア/4スレッド、TDP 6W。N50より高性能ですが、ボードサイズが大きくなりがち
- AMD Ryzen Embedded V1605B: 4コア/8スレッド、TDP 15W。性能は圧倒的に上ですが、消費電力とサイズで不利
- ARM系(Rockchip RK3588等): NPU搭載でAI推論に強いが、x86互換性が必要な用途には不向き
x86互換性を維持しつつ、ここまで小さく仕上げているのはKIWI330の大きなアドバンテージです。
GPU・グラフィックス性能
内蔵GPUはIntel UHD Graphicsで、N50の場合16 EU(Execution Unit)を搭載しています。4K出力には対応しているので、デジタルサイネージ等の表示用途には十分ですね。ただし、3Dグラフィックスやゲーム用途には向きません。
AI・NPU性能
NPUは非搭載 です。これはAmston Lake/Alder Lake-Nアーキテクチャの制約で、AI推論を行う場合はCPUまたはGPUでのソフトウェア処理になります。
OpenVINOを使えばIntel GPUでの推論も可能ですが、専用NPUを搭載するRockchip RK3588(6 TOPS)やIntel Core Ultra(最大13 TOPS)と比較すると、エッジAI用途での性能差は大きいです。軽量な画像認識や物体検出程度なら実用範囲ですが、リアルタイム推論を多用するなら別の選択肢も検討したほうがいいでしょう。
メモリとストレージ
特筆すべきは、このサイズでLPDDR5 4GBと**64GB NVMe(BGA接続)**をオンボード搭載している点です。
LPDDR5はDDR4比で約50%の帯域幅向上と省電力化を両立しており、この小型ボードでの採用はうれしいポイントですね。従来の小型ボードで主流だったeMMCよりも圧倒的に高速なディスクI/Oが期待でき、OSの起動やアプリのレスポンス向上に寄与します。
一方で、これらはすべて基板にBGA半田付けされているため、後からの増設や換装はできません。4GB固定というのは用途によっては心許ないですが、ゲートウェイや専用端末としてはこれで十分というケースも多いでしょう。
通信・インターフェース
標準状態では有線LANポートを備えていません。ネットワークが必要な場合は、M.2 Key E 2230スロットにWi-Fi/BTモジュールを追加するか、USB-Cポート経由でアダプタを接続する運用が前提となります。
ただし、Axiomtekからは拡張モジュール「MIO335-2LAN-S」が用意されており、これを使えばデュアルGbE LANと2ポートのUSB 2.0を追加できます。また「MIO334-6COM-S」を使えば6ポートのシリアル通信(RS-232)にも対応可能です。このあたりの柔軟性は産業用SBCらしいところですね。
映像出力はeDPヘッダに加え、USB 3.2 Type-CポートがDisplayPort Alt Modeをサポートしているため、モダンなUSB-Cディスプレイ接続が可能です。USB-Cポートは合計3つ(水平2つ、垂直1つ)搭載されており、このサイズにしては拡張性を確保しています。
外観


とにかく小ささが際立つ製品ですが、12V電源入力にPhoenixコネクタ(2ピン)を採用するなど、産業用途での信頼性をしっかり確保しているのがAxiomtekらしいところです。
ウォッチドッグタイマー(255段階、1〜255秒)やハードウェアモニタリング機能も搭載しており、無人運用を前提とした設計になっています。CE認証取得済みで、産業機器への組み込みもスムーズに進められるでしょう。
まとめ
Axiomtek KIWI330は、x86ベースでとにかく小さく、かつ動作もキビキビさせたいという具体的なニーズに応える一台です。 NVMeオンボードという贅沢な仕様により、このクラスの小型ボードとしては頭一つ抜けた快適さが得られるでしょう。
ファンレス運用が可能なTDP 6W設計、-30℃〜+60℃の広い動作温度範囲(Amston Lake SKU)、CE認証取得と、産業用途に必要な要素がしっかり揃っています。
ただし、有線LANが無い点やメモリ容量が4GB固定である点は、用途によっては制限となります。また、NPU非搭載のため本格的なエッジAI用途には向きません。無線メインのゲートウェイや、特定のタスクのみをこなす専用端末としての導入が最も輝くはずです。
価格・入手性
| モデル | 構成 | 価格(参考) |
|---|---|---|
| KIWI330-X7211-S | Intel Atom x7211RE、LPDDR5 4GB、NVMe 64GB、ヒートシンク付 | 要問い合わせ |
| KIWI330-N50-S | Intel N50、LPDDR5 4GB、NVMe 64GB、ヒートシンク付 | 要問い合わせ |
| KIWI330-N50-M5 | Intel N50、LPDDR5 4GB、NVMe 64GB、MIO335拡張付 | 要問い合わせ |
| MIO335-2LAN-S | デュアルGbE LAN拡張モジュール | 要問い合わせ |
| MIO334-6COM-S | 6ポートCOM拡張モジュール | 要問い合わせ |
産業用製品のため、正規代理店経由での問い合わせが基本です。日本国内ではAxiomtek Japan(アクシオムテック・ジャパン)が窓口となります。
