
FriendlyElecの「NanoPi R76S」は、Rockchip RK3576にデュアル2.5GbEを組み合わせた超小型SBCです。58×58mmの基板にWAN/LAN分離しやすい構成がまとまっており、自宅ネットワークの実験用ルータや軽量NASを作りたい人に刺さる一台です。
FriendlyElecからNanoPi R76Sが登場しました。Rockchip RK3576にデュアル2.5GbEを組み合わせた、ルータやNAS向けに振り切った超小型SBCなんですよね。
58×58mmという手のひらサイズの基板に、WAN/LAN分離に最適なネットワーク構成がまとまっています。自宅ネットワークの実験用ルータや軽量NASを作りたい人には、かなり刺さる一台です。
ただし、M.2がNVMe向けではなくSDIO Wi-Fi/BT向けという点や、GPIOが8ピンFPCに限定されている点は、購入前にしっかり確認しておきたいポイントですね。
スペック
| ■ NanoPi R76S | |
|---|---|
| CPU | Rockchip RK3576(8コア:Cortex-A72×4 + Cortex-A53×4) |
| GPU | Mali-G52 MC3 |
| NPU | 最大6 TOPSの記載(利用可否はOS・ドライバに依存) |
| メモリ | 3GB・4GB LPDDR4X(SKU選択) |
| ストレージ | microSD(UHS-I)、eMMC 64GB(SKU選択、なし構成もあり) |
| 無線LAN・BT | M.2 SDIO Wi-Fi/BTモジュール増設対応(別売) |
| 有線LAN | 2× 2.5GbE(RTL8125BG) |
| 映像出力 | HDMI Type-A(最大4096×2304@60、1080p@120) |
| USB | USB 3.2 Gen1 Type-A |
| 拡張 | M.2 Key-E相当(SDIO向け)、8ピンFPC GPIO |
| サイズ・重量 | 58×58×1.6mm、約37.5g(基板のみ) |
| 電源 | USB-C 5V入力(10W以上推奨) |
| 対応OS | FriendlyWrt・Ubuntu・Debian・Android等 |
RK3576(8コア)+デュアル2.5GbE+USB-C給電を58×58mmの超小型基板にまとめた、ルータ/NAS向けSBC。M.2がNVMe向けではなくSDIO Wi-Fi/BT向けなので、ストレージ拡張を期待していると詰む点は要確認です。
特徴
SoC・CPU
NanoPi R76Sの心臓部はRockchip RK3576です。RK3576は2024年にリリースされたRockchipのミドルレンジSoCで、Cortex-A72の4コア(最大2.2GHz)とCortex-A53の4コア(最大2.0GHz)を組み合わせた8コア構成になっています。
Cortex-A72は2015年に登場したアーキテクチャですが、いまだにルーティング処理やNAS用途では十分なパフォーマンスを発揮します。4コアあるのでルータとして動かしつつ、軽量なサービス(VPN、DNS、簡易ファイルサーバなど)を載せても余力が取りやすい設計ですね。
うれしいポイントは、同クラスのSBC(Raspberry Pi 4/5、Orange Pi 5など)と比較しても、ネットワーク処理に特化した構成になっている点。2.5GbE×2という構成は、Raspberry Pi 5(1GbE×1)やOrange Pi 5(1GbE+PCIe拡張)と比べると、ネットワーク帯域に関してはNanoPi R76Sが一歩リードしています。
GPUはMali-G52 MC3を搭載しており、OpenGL ES 3.2、Vulkan 1.2、OpenCL 2.0に対応。軽量な描画処理やハードウェアエンコード/デコード(8K@30fps H.265、4K@60fpsエンコード)にも対応しています。ヘッドレス運用がメインでも、初期セットアップ時にデスクトップを表示できるのは便利ですね。
NPU・AI性能
NPUは最大6 TOPS(INT8)の演算性能を持っています。INT4、INT8、INT16、FP16、BF16、TF32の混合演算に対応しており、推論用途としては十分なスペックです。
競合比較として、Raspberry Pi 5にはNPUが搭載されていません。また、同じRockchip系のRK3588搭載機(Orange Pi 5 Plusなど)は6 TOPSですが、RK3576も同等の6 TOPSを持っています。ただし、RK3588は最大構成で6 TOPS×3=18 TOPSまでスケールするため、大規模な推論処理には向きません。
実際にNPUを活用するには「OSイメージ側にNPUランタイム(RKNN)が揃っているか」が重要です。FriendlyWrtやUbuntu等の公式イメージでRKNNがどこまで整備されているか、導入前に確認するのが安全ですね。
電源・熱設計
電源はUSB-Cで5V入力のみです。PD対応充電器(10W以上)が推奨されており、品質のよい5Vアダプタとケーブルを用意するのが運用の基本。USB-C PDネゴシエーションには対応していないので、5V固定出力できるアダプタを選びましょう。

SoC周辺の実装密度が高いので、放熱設計は筐体込みで考えるのが無難です。
熱設計としては、専用のCNC筐体(オプション)が用意されています。ファン端子の有無は公式で確認できないため、基本は受動冷却前提。筐体込みで145.5g、動作温度は0〜70℃の記載があります。夏場の常時稼働を考えると、CNC筐体は実質必須かもしれませんね。
メモリとストレージ
メモリは公式ストアで3GB・4GBのLPDDR4X構成が選択可能です。仕様欄に「LPDDR5 16GB」の記載もありますが、SKU選択肢には見当たらないため、購入時は表記をよく確認してください(未確認)。
ストレージはmicroSD(UHS-I)ブートが基本。eMMCはSKU次第で32GB/64GB搭載か非搭載かが変わります。ルータ用途なら32GBあれば十分で、FriendlyWrtイメージは容量も軽量なので、eMMCなし+microSDでも運用は可能です。
外観

HDMI・RJ45×2・USB-Cが一面に集約されており、配線がすっきりまとまります。
ポート面を見ると、HDMI(Type-A)とRJ45×2(2.5GbE)、USB-C給電という「ルータ寄り」の割り切った構成がわかります。LAN/WANを分けた配線がしやすく、机上でも常設でもケーブル取り回しが整理しやすい配置ですね。

基板下面は放熱パッドの位置が確認でき、CNC筐体との嵌合設計が読み取れます。
基板下面を見ると、固定方法や放熱パッド位置がわかります。CNC筐体との組み合わせが前提の設計で、底面が筐体に近接するレイアウト。8層PCBという高密度実装で、この小ささを実現しているんですよね。
その他
拡張(M.2・GPIO)
M.2は「SDIO Wi-Fi/BTモジュール向け」として説明されており、一般的なNVMe向けM.2(Key-M)とは用途が異なります。ここを誤解するとNVMe SSDを挿そうとして詰むので注意が必要です。
PCIeの世代やレーン数(x1やx2等)は公式で明記されていません(未確認)。ただし、2.5GbE(RTL8125BG)はPCIe接続なので、外部拡張としてPCIeを使うSBCではなく「ネットワーク側に帯域を振った設計」と捉えるのが現実的ですね。
GPIOは8ピンFPC(0.5mmピッチ)コネクタで、一般的な40ピンヘッダ互換ではありません。電圧は3.3V、ADCは0〜1.8V、VCC_3V3_S3は最大300mA。組み込み用途は「必要最小限のGPIOで足りるか」を先に確認するのが安全です。
ネットワーク
デュアル2.5GbEは、この製品の最大のセールスポイントです。ルータ(WAN/LAN分離)構成や、簡易NAS(2.5GbE uplink+2.5GbE client)構成に直結します。
RTL8125BGは実績のあるチップで、Linux環境での安定性も高いのがうれしいポイント。2.5GbEを2本きっちり使って「持ち運べる実験用ルータ」を作りたい人には刺さる設計です。
映像出力
HDMI出力があるため、初期セットアップを画面ありで詰めたい人にも向きます。解像度・リフレッシュレート(最大4096×2304@60、1080p@120)はOS・ドライバの影響を受けるため、公式記載の最大値は「上限目安」として扱うのが安全です。HDMI 1.4/2.0両対応で、10bit Deep Colorや3Dビデオフォーマットにも対応しています。
OSサポート
公式では多彩なOSイメージが配布されています:
- FriendlyWrt(21.02/23.05/24.10):ルータ用途の本命
- Ubuntu(20.04/24.04 Desktop/Core):デスクトップ・開発用途
- Debian(11/12):軽量サーバ用途
- Android 14(Tablet/TV):メディアプレイヤー用途
- OpenMediaVault:NAS用途
- Proxmox VE:仮想化プラットフォーム
- Alpine Linux / Buildroot:組み込み・カスタム用途
カーネルはLinux 6.1 LTS、U-Boot 2017.09ベース。公式ダウンロードページからイメージを取得できます。
まとめ
NanoPi R76Sは、RK3576(8コア)+デュアル2.5GbEという構成から見て「ルータ/ゲートウェイ+軽量NAS」用途に寄せたSBCです。
2.5GbEを2本使って自宅ルータやネットワーク実験機を組みたい人には、間違いなく刺さる構成です。58×58mmのコンパクトさを活かして省スペース設置したい、あるいはFriendlyWrtやOpenVault等で軽量ネットワークサービスを動かしたい人にも最適です。
逆に、NVMe拡張でストレージを増設したい(M.2はSDIO向け)、40ピンGPIOを活かした電子工作をしたいといった汎用的な使い方には向きません。大容量メモリが必要な場合も、仕様をよく確認してから検討したほうが無難でしょう。
個人的には、49ドルからという価格で2.5GbE×2構成が手に入るのはかなりお得だと感じます。汎用SBCとしての拡張性を求めると物足りないですが、「ネットワーク特化」という割り切りを理解した上で選べば、満足度の高い一台ですね。
価格
| 構成 | 販売元 | 価格(税別) |
|---|---|---|
| 3GB RAM / eMMCなし | FriendlyElec公式 | $49.00 |
| 4GB RAM / eMMC 32GB | FriendlyElec公式 | SKU選択時に確認 |
| 4GB RAM / eMMC 64GB | FriendlyElec公式 | SKU選択時に確認 |
| CNC筐体セット | FriendlyElec公式 | 別途オプション |
※価格は2025年12月時点。送料別。
