
Orange Pi RVは、StarFive JH-7110クアッドコアプロセッサを搭載したRISC-V開発ボードです。M.2 SSDスロットやUSB 3.0ポートを備え、30ドル台という低価格で本格的なRISC-V環境を構築できます。
Orange Piから、新たなRISC-V開発ボード「Orange Pi RV」が登場しました。心臓部にはStarFive JH-7110を採用し、VisionFive 2やPineTab-Vなどで実績のあるSoCをベースにしています。
PCIe接続のM.2スロットや4つのUSB 3.0ポートを備え、NVMe SSDによる高速ストレージ環境を構築できるのがうれしいポイントですね。Wi-Fi 5やBluetooth 5.0も標準装備で、追加投資なしにネットワーク接続が可能です。
30ドル台からという戦略的な価格設定は、「RISC-VでLinuxを触ってみたい」という入門者にとって大きな魅力。VisionFive 2(4GBモデル約55ドル〜)と比較しても、コストパフォーマンスで勝負できる一台なんですよね。
スペック
| ■ Orange Pi RV | |
|---|---|
| SoC | StarFive JH-7110(RISC-V U74 Quad-core 1.5GHz + S7 Monitor) |
| GPU | IMG BXE-4-32(OpenGL ES 3.2 / Vulkan 1.2) |
| メモリ | 2GB / 4GB / 8GB LPDDR4(2,800MT/s) |
| ストレージ | M.2 M-Key(PCIe 2.0 x1、2280対応)、MicroSD |
| ネットワーク | 1GbE x1(YT8531C)、Wi-Fi 5 + BT 5.0(AP6256) |
| 映像出力 | HDMI 2.0(4K@30fps)、MIPI DSI(2Lane) |
| カメラ | MIPI CSI(2Lane、4K@30fps) |
| 動画デコード | H.264 / H.265(4K@30fps、マルチストリーム) |
| 動画エンコード | H.265(1080p@30fps、マルチストリーム) |
| USB | USB 3.0 x4(PCIe to USB HUB経由) |
| 拡張 | 40Pin GPIO(UART / I2C / SPI / 3.3V / 5V) |
| 電源 | USB-C 5V 4A |
| サイズ | 89 x 56 x 1.6 mm |
SiFive U74クアッドコア + IMG製GPUで、RISC-V Linuxの「本命構成」を30ドル台に凝縮。NVMe対応で実用性も抜群です。
特徴
SoC・パフォーマンス
心臓部にはStarFive JH-7110を採用しています。これはVisionFive 2やPineTab-Vなどでも採用実績のある、現時点でのRISC-V Linuxのスタンダードとも言えるSoCですね。
JH-7110の正体は、SiFive U74クアッドコア + S7モニターコアという構成。U74は64ビットRISC-Vコアで、RV64GCB命令セット(Base Integer + Compressed + Bit Manipulation)をサポートしています。4コアで2MBのL2キャッシュを共有し、動作周波数は最大1.5GHz。前世代のJH7100(U74デュアルコア、1.2GHz)から大幅にパワーアップしています。
競合SoCとの比較:
| SoC | コア構成 | 周波数 | L2キャッシュ | GPU |
|---|---|---|---|---|
| JH-7110 | U74 x4 + S7 | 1.5GHz | 2MB共有 | IMG BXE-4-32 |
| JH-7100 | U74 x2 | 1.2GHz | 2MB共有 | なし |
| D1(C906) | C906 x1 | 1.0GHz | なし | なし |
実際のパフォーマンスとしては、Raspberry Pi 3〜4の間といったところ。Linuxを動かして開発環境を整えるには十分な性能を持っています。メインストリームのRISC-V向けLinuxディストリビューション(Debian、Ubuntu、Fedoraなど)がほぼ動作するため、既存のVisionFive 2向けドキュメントやコミュニティ資産をそのまま活用できるのがうれしいポイントですね。
GPUはImagination Technologies製のIMG BXE-4-32を搭載。OpenGL ES 3.2、Vulkan 1.2、OpenCLをサポートしており、3Dレンダリングや軽量なGPUコンピューティングにも対応しています。ただし、Linuxでのドライバサポートはまだ発展途上で、フルスペックを発揮するには時間がかかりそうです。
動画処理については、ハードウェアデコーダーがH.264 / H.265で4K@30fpsまで対応。エンコーダーはH.265で1080p@30fpsをサポートしています。監視カメラやエッジでの動画処理用途には十分刺さるスペックですね。

NPU・AI性能
ここは正直に言うと、JH-7110の弱点になります。JH-7110にはNPU(Neural Processing Unit)が搭載されていません。
前世代のJH-7100には「StarFive NNE(Neural Network Engine)」という1 TOPSのAIアクセラレータが搭載されていましたが、JH-7110ではこれが省略されています。推論処理を行う場合は、CPUまたはGPU(OpenCL経由)で処理することになります。
競合RISC-VボードとのAI性能比較:
| ボード | NPU | AI性能 |
|---|---|---|
| Orange Pi RV(JH-7110) | なし | ー |
| Milk-V Duo 256M(SG2002) | CVITEK TPU | 1 TOPS(INT8) |
| Lichee RV Nano(SG2002) | CVITEK TPU | 1 TOPS(INT8) |
| VisionFive V1(JH-7100) | StarFive NNE | 1 TOPS |
エッジAI処理を重視する場合は、SG2002搭載のMilk-V DuoやLichee RV Nanoを検討した方がいいかもしれません。逆に、純粋なLinux開発環境としてはJH-7110の方がソフトウェアエコシステムが充実しているので、用途に応じて選択してください。
拡張性:M.2とUSB 3.0
この価格帯のSBCとしては珍しく、M.2 M-Key(PCIe 2.0 x1)スロットを搭載しています。2280サイズに対応しているので、一般的なNVMe SSDがそのまま使えますね。起動ドライブやデータ領域としてSSDを使えるため、SDカード運用に比べて信頼性と速度が段違いです。
ただし、PCIe 2.0 x1なので理論値は最大500MB/s程度。Gen3やGen4のSSDを入れても性能はこの上限で頭打ちになる点には注意が必要です。それでもSDカード(UHS-I: 最大104MB/s)と比較すれば約5倍の帯域があるので、体感速度は大幅に向上します。
さらにUSB 3.0を4ポート搭載しており、周辺機器の接続にも困りません。マウス、キーボード、USBメモリなどをハブなしで直結できるのは、デスクトップ用途として使う際に地味に効いてくるポイントです。なお、このUSB 3.0はPCIe to USB HUBチップ経由での実装となっています。
ネットワークと映像出力
有線LANはギガビット対応(RealtekではなくYT8531C採用)、無線もWi-Fi 5 / BT 5.0(AP6256モジュール)を標準装備しており、ネットワーク周りで追加投資が不要なのもうれしい点です。
映像出力はHDMI 2.0で4K@30fpsまで対応。デスクトップ用途ならFHD運用が現実的ですが、SoCのハードウェアデコーダーを活用すれば4K動画の再生も可能です。MIPI DSIとCSIも搭載しているので、組み込み用途でのディスプレイ接続やカメラ入力にも対応できます。
外観


サイズは89 x 56 mmとRaspberry Pi 4に近いサイズ感。既存の汎用ケースなどを少し加工すれば収まりそうな形状です。40PinのGPIOヘッダも標準で搭載されており、UART、I2C、SPI、3.3V / 5V電源などが引き出せます。
まとめ
Orange Pi RVは、RISC-Vボードの「標準機」の座を狙えるポテンシャルを持っています。
JH-7110という実績あるSoC(SiFive U74クアッドコア + IMG GPU)を採用しつつ、M.2 SSDとWi-Fiを標準搭載し、さらに30ドル台からという価格設定。VisionFive 2が4GBモデルで55ドル前後、8GBモデルで85ドル前後であることを考えると、コスト面での競争力は明確ですね。
NPUが非搭載である点は用途によっては弱点になりますが、「これからRISC-VでLinuxを触ってみたい」「RISC-Vの開発環境を安価に構築したい」という入門者にとっては、これほどバランスの良い選択肢は他にないかもしれません。
価格表
| モデル | 販売元 | 価格(参考) |
|---|---|---|
| Orange Pi RV 2GB | 公式(AliExpress等) | 約$30〜 |
| Orange Pi RV 4GB | 公式(AliExpress等) | 約$40〜 |
| Orange Pi RV 8GB | 公式(AliExpress等) | 約$55〜 |
| 参考:VisionFive 2 4GB | StarFive公式 | 約$55〜 |
| 参考:VisionFive 2 8GB | StarFive公式 | 約$85〜 |
※価格は2025年12月時点の参考価格です。為替や在庫状況により変動します。
関連リンク
- Orange Pi RV 製品ページ(公式)
- Orange Pi RV ダウンロードページ(公式)
- StarFive JH-7110 技術仕様(StarFive公式ドキュメント)
- VisionFive 2 製品ページ(StarFive公式)
- RVspace フォーラム(JH-7110コミュニティ)
