
Advantech "MIO-5355":QCS6490搭載、12.3TOPS NPU内蔵の3.5インチSBC
Advantechから登場した3.5インチSBC「MIO-5355」は、Qualcomm QCS6490を搭載し、本体サイズに似合わぬ強力なAI性能(12.3 TOPS)を持ちます。M.2スロット3基による拡張性と、産業グレードの信頼性が魅力です。
2025年12月08日更新の公式データシートに掲載された、Advantechの3.5インチSBC「MIO-5355」をチェックします。
産業用ボードで実績のあるAdvantechが、Qualcommの「Dragonwing」ことQCS6490(またはQCS5430)を3.5インチサイズに載せてきました。産業機器の心臓部として、「推論も映像も一気にやる」構成を狙った意欲作です。

| ■ 製品名 | MIO-5355 |
|---|---|
| CPU | Qualcomm QCS6490 (8コア) / QCS5430 |
| NPU | iNPU 最大 12.3 TOPS (QCS6490) |
| メモリ | オンボード LPDDR5 8GB / 4GB |
| ストレージ | UFS 3.1 128GB / eMMC 5.1 |
| M.2 B-Key 2280 (NVMe) | |
| microSD (SDIO) | |
| ネットワーク | 2.5GbE x2 (RTL8211FS) |
| 拡張 | M.2 E-Key 2230 (Wi-Fi/BT) |
| M.2 B-Key 3052 (LTE/5G) | |
| 映像出力 | HDMI 2.0 (4K@60) |
| LVDS / eDP (選択式) | |
| 電源 | DC 12V ±10% (ATX 2x2pin) |
| サイズ | 146 x 102 mm (3.5インチ) |
| OS | Yocto, Windows 11 IoT, Ubuntu 24.04 |
12.3 TOPSのAI性能とトリプルM.2スロットを、3.5インチの産業用フォームファクタに凝縮したエッジAIボードです。
特徴
主要コンポーネント(SoC・AI)
「MIO-5355」の核は、Qualcomm Dragonwingの QCS6490(またはQCS5430)です。8コアCPUで、A78系とA55系の混成(1x A78, 3x A78, 4x A55)構成となっています。big.LITTLE構成により、高性能コアと省電力コアを使い分けられるため、常時稼働しがちな産業機器にはうれしい設計です。製造プロセスは6nmで、エッジ向けとしては効率寄りの世代感と言えます。
NPUに関しては、QCS6490側で 最大12.3 TOPS のiNPUを搭載している点が大きな魅力です。TOPSはあくまで理論値ですが、物体検出や異常検知のようなエッジAIタスクに対して「専用のハードウェアが最初から用意されている」安心感があります。
ちなみに、CPU性能の目安としては、Geekbench 6でシングル1,513 / マルチ3,736程度(投稿値ベース)となり、RK3588(マルチ5,000点台)と比較するとやや控えめ。とはいえ、本機は産業I/OやNPU込みのトータルバランスで勝負する製品でしょう。
拡張性(トリプルM.2)
拡張スロットはM.2が3本立てで、役割が明確に分かれています。
- M.2 E-Key 2230:Wi-Fi/BTモジュール用(PCIe x1 + USB2.0)
- M.2 B-Key 3052:LTE/5Gモジュール用(PCIe x1 + USB2.0、Nano-SIMスロット付き)
- M.2 B-Key 2280:NVMeストレージ用(PCIe x2)
特にB-Key 2280スロットがストレージ専用として用意されているのがポイントです。PCIeの世代(Gen)こそ公式情報で明記されていませんが、NVMe SSDで容量や耐久性を確保できるのは心強いですね。
電源・熱
電源入力は DC 12V ±10% で、コネクタはATX 2x2pinです。産業用らしくUSB PDなどのモダンな給電には対応していませんが、装置組み込み用途ではむしろ12V単一の方が扱いやすいケースも多いでしょう。消費電力は最大18W前後(TBD)とのことなので、ACアダプタ選定には少し余裕を持たせたいところです。
熱設計については、0〜60℃(0.7m/s airflow)での動作をサポートし、パッシブヒートシンクが付属します。完全ファンレス運用も狙えそうですが、エアフロー条件が書かれている点には注意が必要です。
外観

トップビュー:M.2スロット3基の配置が確認できます
基板上面からは、M.2スロットが整然と並んでいる様子が見て取れます。無線・セルラー・NVMeをそれぞれのスロットに割り当てて、機能を最大化する構成がイメージできます。

ボトムビュー:実装密度と取付穴の位置関係
下面には主要チップの一部やコネクタの実装が見られます。ヒートスプレッダや筐体放熱を検討する際は、ここの干渉を確認しておくと安心です。

ポート面:デュアルGbEとHDMI、USBポート群
ポート面にはRJ-45が2ポート並びます。GbE x2構成なので、WAN/LANを物理的に分けたり、装置内ネットワークと上位ネットワークを分離したりといった使い方が可能です。映像出力はHDMI 2.0(4K@60)がメインで、産業用モニタやサイネージ用途にも対応します。
まとめ
MIO-5355は、実績あるQualcomm SoCを産業用フォームファクタに落とし込んだ、質実剛健なエッジAIボードです。
ラズパイのようなホビー用途というよりは、「現場で止まらずに動き続けるAIエッジ」を作りたい人向け。特に、オンボードでLTE/5Gモジュールを搭載できるM.2スロット(SIMスロット付き)があるため、ゲートウェイ用途には最適です。
価格は要見積もりとなりますが、このクラスの産業用SBCとしては標準的な対応と言えます。OSもYoctoだけでなくWindows IoTやUbuntuに対応しているため、自社のソフトウェア資産に合わせて選択できるのもうれしいポイントです。
| 販売元 | 価格(参考) |
|---|---|
| 公式(Advantech) | 要見積もり |
注意点としては、PCIeの世代やGPIOの電圧レベルなど、細かい仕様が一部未確認であること。量産設計に組み込む際は、事前に代理店やFAEへ確認を入れるのが無難です。
